2020/12/17

新型コロナウイルス感染症と都道府県ごとの介護サービス利用

著者

渡邊多永子1) 伊藤智子2) 平田佐智子1)3) 小林秀3) 田宮菜奈子2)3)
1) 筑波大学ヘルスサービス開発研究センター
2) 筑波大学医学医療系
3) 株式会社エス・エム・エス A&I推進部 研究開発グループ

序論

新型コロナウイルス感染症拡大期間において、介護保険による居宅介護サービスの利用者数が変化することが予想される。また、同感染症の感染状況は地域によって差があるため、利用に関しても地域差が発生する可能性がある。本研究では、居宅介護サービスの利用日数に対してサービス種および地域特性に着目して分析を行い、前年の傾向と比較して記述する。

方法

分析にあたり、介護経営支援サービス「カイポケ」の介護保険請求データを用いた。2020年1~4月の全国および都道府県別の1人当たり在宅介護サービス利用日数が前年同月比でどう変化したかを、サービス種別に記述・図示した。サービス種は、居宅介護サービスより「訪問介護・訪問看護・通所介護・通所リハビリテーション」の4種を選定した。2020年と前年の対象者の特性の違いを調整するため、各月のデータを都道府県・性・年齢・要介護度で1:1にマッチングした。

結果

全国における2020年1~4月の各サービスの1人当たり利用日数(前年同月比%)は以下の通りであった。
・訪問介護 1月:100.6% 2月:103.0% 3月:101.5% 4月:102.8%
・訪問看護 1月:114.3% 2月:112.5% 3月:116.8% 4月:112.8%
・通所介護 1月:103.7% 2月:105.6% 3月:100.5% 4月:95.7%
・通所リハビリテーション
1月:101.7% 2月:102.6% 3月:96.3% 4月:87.1%
都道府県別に見ると、北海道・関東・関西・北陸の地域において、2020年3~4月中に、通所系介護サービス・通所リハビリテーションの前年比での利用減少が見られた(下図「通所介護」および「通所リハビリテーション」を参照)。なお、図内の青い色は前年より利用日数が減っている都道府県、赤い色は前年より利用日数が増えている都道府県を示している。

考察

新型コロナウイルス感染症の流行時期および、その期間中に感染者が多かった北海道や関東、関西、北陸において通所系サービス、特に通所リハビリテーションの利用減少(前年比)が見られた。この変化が今後どのように推移するのか、また、こうした変化が高齢者の心身の健康にどう影響するかについては、今後の研究が必要である。加えて、利用減少の原因が利用者の自粛によるものか、施設の休止によるものかの調査も別途必要である。

 

訪問介護

 

訪問看護

 

通所介護

 

通所リハビリテーション

参考文献

渡邊多永子・伊藤智子・平田佐智子・小林秀・田宮菜奈子(2020).
「COVID-19拡大期間における介護保険サービス利用(報告2)―都道府県ごとの変化」, 第79回公衆衛生学会総会抄録集.

※本記事は、第79回公衆衛生学会で発表された発表「COVID-19拡大期間における介護保険サービス利用(報告2)―都道府県ごとの変化」を元に、株式会社エス・エム・エスが執筆しました。

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