新型コロナウイルス感染症と都道府県ごとの介護サービス利用
新型コロナウイルス感染症の流行時期および、その期間中に感染者が多かった北海道や関東、関西、北陸において通所系サービス、特に通所リハビリテーションの利用減少(前年比)が見られた。この変化が今後どのように推移するのか、また、こうした変化が高齢者の心身の健康にどう影響するかについては、今後の研究が必要である。加えて、利用減少の原因が利用者の自粛によるものか、施設の休止によるものかの調査も別途必要である。
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伊藤智子1) 渡邊多永子2) 平田佐智子2)3) 小林秀3) 田宮菜奈子1)2)
1) 筑波大学医学医療系
2) 筑波大学ヘルスサービス開発研究センター
3) 株式会社エス・エム・エス A&I推進部 研究開発グループ
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、感染回避のために居宅介護サービスの利用者がサービスの利用を控えることが予想される。本研究では、介護保険による居宅介護サービスの利用者数が昨年と比較してどのように変化したかを示す。また、サービス種別や利用者の要介護度が利用者数の変化にどのように影響するのかを記述する。
分析には、介護経営支援サービス「カイポケ」の介護保険請求データを用いた。新型コロナウイルス感染症拡大期間(2019年11月~2020年4月)と、前年2018年11月~2019年4月のデータを分析対象とし、利用者数の推移を比較した。分析対象となる利用者は、居宅サービスを利用する要介護1-5の65歳以上の者とした。さらに、サービス種別および要介護度別に利用者数を記述した。
分析対象となった利用者数は、2018年11月で781,609人、2019年11月で902,985人であった。
サービス全体、全要介護度における利用者数は、前年では2-3月の前月比2%増加し、また3-4月で2%増加しており、緩やかに月々増加していた。新型コロナウイルス感染症拡大期間においては、2-3月の前月比0%、3-4月0%とほぼ横ばいであった。
サービス種別では、通所介護の新型コロナウイルス感染症拡大期間の2-3月において前月比2%減少、また3-4月に1%減少と減少傾向にあった。通所リハビリテーションにおいても同様の減少傾向がみられた。
要介護度別では、要介護1のサービス全体の利用者数が新型コロナウイルス感染症拡大期間における2-3月で前月比1%減少しており、続く3-4月ではさらに1%減少であった。特に、要介護1-2における通所系サービスの新型コロナウイルス感染症拡大期間での利用減少は大きく、2-3月の前月比は、要介護1・通所介護で3%減少、要介護2・通所介護で2%減少であり、要介護1・通所リハビリテーションで3%減少、要介護2・通所リハビリテーションで1%減少していた。
新型コロナウイルス感染症拡大期間において、通所介護・通所リハビリテーションなどの通所系サービスの利用減少がみられた。特に、要介護度1-2の軽度要介護者において減少がみられ、要介護度によって利用の変化に差がみられた。今後はこうした利用の変化による要介護度の悪化や、予後への影響を検証していく必要がある。
※本記事は、第79回公衆衛生学会で発表された発表「COVID-19拡大期間における介護保険サービス利用(報告1)―利用者数の変化」を元に、株式会社エス・エム・エスが執筆しました。
伊藤智子・渡邊多永子・平田佐智子・小林秀・田宮菜奈子(2020).
「COVID-19拡大期間における介護保険サービス利用(報告2)―都道府県ごとの変化」, 第79回公衆衛生学会総会抄録集.