新型コロナウイルス感染症と都道府県ごとの介護サービス利用
新型コロナウイルス感染症の流行時期および、その期間中に感染者が多かった北海道や関東、関西、北陸において通所系サービス、特に通所リハビリテーションの利用減少(前年比)が見られた。この変化が今後どのように推移するのか、また、こうした変化が高齢者の心身の健康にどう影響するかについては、今後の研究が必要である。加えて、利用減少の原因が利用者の自粛によるものか、施設の休止によるものかの調査も別途必要である。
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新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、介護サービスを提供する各種事業所の運営状況も変化することが予測される。特に、通所型サービスを提供する事業所においては、集団で過ごすことによる感染クラスター発生のリスクが高いと考えられる。また、地方自治体の休業要請に従い、サービス提供を休止する事業所も多いと考えられ、介護事業所の収入にも影響が及ぶ可能性がある。
本研究では介護経営支援サービス「カイポケ」の介護レセプトデータを用いて、新型コロナウイルス感染症拡大期間における介護事業所の収入の変化を記述する。
カイポケを利用している全国の居宅介護支援事業所・通所介護事業所・訪問介護事業所・訪問看護事業所の2019年11月~2020年7月及び2018年11月~2019年7月(サービス提供月)の事業所毎収入を算出し、比較した。算出対象は、対象となる全期間において実績・請求がある事業所のみとした。
2019年11月及び2018年11月の収入と比較して、各月の収入額がどのように変化しているかに対して、以下のラベルを付与した。
a) 収入が1倍以上(図内ではオレンジ色で描画)
b) 0.8~1倍(図内では黄色で描画)
c) 0~0.8倍(図内では青色で描画)
その後、各ラベルごとに事業所数を集計した。
新型コロナウイルス感染症が拡大している期間、特に緊急事態宣言が発令されていた2020年4月~5月において、2割以上収入が低下した通所介護事業所の割合が、前年と比較して著しく増加していた。しかし、6月以降はこの傾向が収まり、収入が増加傾向に転じた事業所が増えていることがわかった。その他の介護事業所でも、2020年4月~5月において収入が低下した事業所数がわずかに増加していたが、6月以降は昨年並みに戻った。
※本記事は、第79回公衆衛生学会で発表された発表「COVID-19拡大期間における介護保険サービス利用(報告3)」を元に、株式会社エス・エム・エスが執筆しました。
平田佐智子・渡邊多永子・伊藤智子・小林秀・田宮菜奈子(2020).
「COVID-19拡大期間における介護保険サービス利用(報告3)」, 第79回公衆衛生学会総会抄録集.