2021/5/6

2021年4月報酬改定における取組みに関する調査

結果の概要

2021年4月の介護報酬改定により、「感染症や災害への対応力強化」や「介護現場の革新」が求められるようになった。これに関連して、感染症や災害が発生した時の業務継続に向けた取組や、テクノロジーの活用の状況について調査を実施した。
多くの事業所が業務継続に向けた取組を推進する予定をもっているが、他方で即座に取組を始める事業所は少なく、半数近くが猶予期間の3年間のなかで実行する予定であることがわかった。
また、テクノロジー(ビデオ会議、電磁的データ保存)の活用については、多くの事業所が今後取り組みたいと考えている一方で、おおよそ3割程度の事業所ではこれらを活用する予定がないということもわかった。

調査概要

  • 調査名:2021年4月報酬改定における取組みに関する調査(2021年3月実施)
  • 調査対象:カイポケリサーチ
  • 対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、訪問看護、通所介護
  • 調査期間:2021年3月22日~4月15日
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:213件
    居宅介護支援88件(41.3%)、訪問介護48件(22.5%)、訪問看護16件(7.5%)、通所介護61件(28.6%)
    経営者124件(58.2%)、管理者が57件(26.8%)

調査詳細

1. 「2021年4月以降、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、 訓練の実施が義務化されますが、取組みを行う予定ですか」という質問に対して、「はい」が87.8%、「いいえ」が12.2%だった。

2. 1.の設問に「はい」と回答した人に対して「業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練の実施についてはどのように行う予定ですか」と質問したところ、約7割が「厚生労働省のガイドライン等を見ながら実施する予定」と回答した。「有料サービスを活用し、作成支援などを受けて実施する予定」という回答は選択肢のなかで最も少なく、2.1%だった。

3. 1の設問に「いいえ」と回答した人に対して「業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施等を行わない理由は、どのような理由ですか」と質問したところ、半数を超える回答者が「報酬改定の内容がよくわかっておらず、具体的に何をすればよいか分かっていないため」を選択した(53.8%)。「単位数の変更などの報酬改定対応があり、落ち着いてから考えようと思っているため」(42.3%)、「3年間猶予期間があるため、状況を見ながら検討していこうと考えているため」(38.5%)という回答が次に続いた。

4. 「業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練の実施についてはいつくらいに取り組む予定ですか」という質問に対し、約半数が「2024年3月までに準備する予定」と回答した。

 

5. 「介護事業所の業務継続計画策定に向けて最も必要な内容はどのような内容だと思いますか」という質問に対し、最も多い回答が「緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築」であり(60.1%)、次いで多い回答が「売上が減少しても大きな影響を受けないよう日頃からの利用者獲得の取組み」と「人命安全のルール策定と徹底」(ともに13.1%)だった。


6. 「サービス担当者会議要件の緩和でテレビ電話の活用が可能になりますが、テレビ電話を活用する予定はありますか」という質問に対し、半数以上が「今後取り組む予定」と回答しこれが最も多かった(54.0%)。次いで多い回答が約1/3を占めた「活用しない」であり(32.4%)、「既に実施している」という回答が最も少なかった(13.6%)。


7. 6の質問に「活用しない」と回答した人に対して、「テレビ電話を活用しない理由を教えてください」と質問したところ、「テレビ電話を実施するための機器がないため」という回答が最も多く(42.0%)、これに「直接会って会議をしないと状況把握が困難なため」という回答が続き(36.2%)、以下「職員のPCスキルが乏しく、活用ができないため」(24.6%)、「他の事業者が活用していないため」(20.3%)、「テレビ電話を実施するために活用するツールが分からないため」(17.4%)となった。

8. 6の質問に「活用しない」と回答した人に対して、「どのようなことが解決できると活用がより進んでいくと思いますか」と質問したところ、半数以上が「現状では、解決できることは少なく、活用は進まないと考えている」と回答した。

9. 電磁的データの利活用に関して、「書類押印要件の緩和で書面で説明・同意等を行うものについて、電磁的記録による対応を実施する予定はありますか」「電磁的データ保存の範囲が明確化される予定ですが、記録書等を今後電磁的データで保存する予定はありますか」という2つの質問をしたところ、どちらに関しても約6割が「今後より組む予定」と回答した。他方で、前者については「実施しない」という回答が次いで多く(34.7%)、対して後者は「既に実施している」という回答が次いで多かった(20.7%)。(端数処理の関係で合計は100.0%にならない)

 

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

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