結果の概要

2021年度介護報酬改定において「テクノロジーの活用による介護サービスの質の向上及び業務効率化」を推進していくことが確認されたことを受け、ICTの活用がどのように進んでいるのかを調査した。
PCやスマートフォンなどのICTの活用が確認できた一方で、いまだにFAXの利用も多かった。また、この半年でガラケーの利用を停止したという回答が半分を超え、スマートフォン・タブレット・PC等に転換したことが推察される。
電子署名ツールは、今後利用したいという声を最も多く集める一方で、現在業務上で活用しているという回答は全くなかった。事業者側のみでなく、利用者あるいは利用者の家族も利用するが前提になっていることが障壁になっていると考えられる。
ICT活用の効果としては、実際に現れているものとしても、期待されているものとしても、「残業時間の減少」「移動にかかる時間の減少」という、時間的効率の上昇に関わるものが多く挙げられていた。

 

調査概要

  • 調査名:ICT活用による業務効率化に関する調査(2021年7月実施)
  • 調査対象:カイポケリサーチ
  • 対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、通所介護、福祉用具、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護
  • 調査期間:2021年7月15日~8月10日
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:267件
    経営者:191件、71.5%。経営者以外:76件、28.5%

 

調査詳細

1. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、現在業務上で利用しているものを選択してください。」という複数選択可の設問に対して、「スマートフォン」を選択する回答が最も多く(第1位・81.3%)、それに「FAX」(第2位・78.3%)、「ノートパソコン」 (第3位・74.9%)が続いた。

2. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、この半年の間に業務上の利用を始めたものを選択してください。」という複数選択可の設問に対して、「オンラインで会議をするためのアプリケーション」を選択する回答が最も多く(第1位・41.6%)、それに「タブレット」(第2位・23.2%)、「スマートフォン」(第3位・22.8%)が続いた。

 

3. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、この半年の間に業務上の利用を止めたものを選択してください。」という複数選択可の設問に対して、「ガラケー」を選択する回答が群を抜いて多かった(第1位・51.7%)。

 

4. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、今後利用したいと考えているものを選択してください。」という複数選択可の設問に対して、「電子署名ツール」を選択する回答が最も多く(第1位・28.1%)、それに「職員間で業務上の連絡をとるためのアプリケーション」(第2位タイ・27.3%)、「職員間でスケジュールを共有するためのアプリケーション」(第2位タイ・27.3%)が続いた。

5. 「ご回答いただいている拠点において、ICT(情報通信技術)が十分に活用されていると思いますか?」という設問に対して、「活用されていると思う/どちらかといえば活用されていると思う/どちらかといえば活用されていないと思う/活用されていないと思う」の4択で回答を求めたところ、ポジティブな回答(「活用されていると思う/どちらかといえば活用されていると思う」。以下の円グラフでは「はい」と表示する)が約6割を占め、ネガティブな回答(「どちらかといえば活用されていないと思う/活用されていないと思う」。以下の円グラフでは「いいえ」と表示する)が約4割を占めた。

6. 「ご回答いただいている拠点において、この半年間の間にICT(情報通信技術)の活用が進んだと思いますか?」という設問に対して、「進んだと思う/どちらかといえば進んだと思う/どちらかといえば進んでいないと思う/進んでいないと思う」の4択で回答を求めたところ、ポジティブな回答(「進んだと思う/どちらかといえば進んだと思う」。以下の円グラフでは「はい」と表示する)が約6割を占め、ネガティブな回答(「どちらかといえば進んでいないと思う/進んでいないと思う」。以下の円グラフでは「いいえ」と表示する)が約4割を占めた。

7. 「ご回答いただいている拠点において、これまでICT(情報通信技術)活用が進んだことによってもたらされたと感じている効果を選択してください。」という複数選択可の設問に対して、「残業時間の減少」を選択する回答が最も多く(第1位・39.3%)、それに「移動にかかる時間の減少」(第2位・30.7%)、「精神的なストレスの減少」(第3位・25.1%)が続いた。

8. 「ご回答いただいている拠点において、これからICT(情報通信技術)活用が進むことによってもたらされるだろうと感じている効果を選択してください。」という複数選択可の設問に対して、「残業時間の減少」を選択する回答が最も多く(第1位・50.2%)、それに「移動にかかる時間の減少」(第2位・36.0%)、「精神的なストレスの減少」(第3位・33.0%)が続いた。

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

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