結果の概要

高齢社会ラボでは、2021年度介護報酬改定において「テクノロジーの活用による介護サービスの質の向上及び業務効率化」を推進していくことが確認されたことを受け、半年に一度ICTの活用がどのように進んでいるのかを調査することといたしました。2021年7月に実施した第1回調査に続き、今回は第2回となります。
業務上利用されているICTの構成については、前回調査と今回調査で大きく変わらない結果となりました。また、半年間でのICT活用の進展については、やや前回調査と比較して鈍化している傾向が現れています。ICT活用の実際の/期待される効用について尋ねたところ、今回調査の結果では、前回調査の結果と比較して「残業時間の減少」という効用の選択率が低下していました。

 

調査概要

  • 調査名:第2回ICT活用による業務効率化に関する調査(2022年1月実施)
  • 調査対象:カイポケリサーチ
  • 対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション
  • 調査期間:2022年1月15日~2月10日
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:334件

 

調査詳細

1. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、現在業務上で利用しているものを選択してください」という設問に対する回答は、第1回、第2回調査ともに同様の傾向が見られ、上位群・中位群・下位群に分かれることがわかった。

  • 上位群にはスマートフォン・FAX・ノートパソコン・タブレット・電子メールが属する。
  • 中位群にはデスクトップパソコン・オンライン会議ツール・職員間のコミュニケーションツールが属する。
  • 下位群には利用者またはその家族とのコミュニケーションツール・クラウドストレージ・クラウド会計ソフト・スケジュール共有ソフト・ガラケー・電子署名ツールが属する。

2. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、この半年の間に業務上の利用を始めたものを選択してください」という設問に対する第2回調査の回答は、「該当するものはない」という回答を除いて、「オンライン会議ツール」が最も多く(18.3%)、それに「職員間のコミュニケーションツール」(10.8%)、「タブレット」「スマートフォン」(ともに9.0%)が続いた。
なお、第1回調査には「該当するものはない」という項目がなく、有意義に比較することができないため、第2回調査の結果のみを表示している。

3. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、今後利用したいと考えているものを選択してください」という設問に対する第2回調査の回答は、「該当するものはない」という回答を除いて、「利用者またはその家族とのコミュニケーションツール」が最も多く(17.4%)、それに「電子署名ツール」(16.2%)、スケジュール共有ツール(15.0%)が続いた。
なお、第1回調査には「該当するものはない」という項目がなく、有意義に比較することができないため、第2回調査の結果のみを表示している。

4. 「あなたの事業所でICT(情報通信技術)が十分に活用されていると思いますか?」という設問に対する回答は、第1回調査・第2回調査ともに同様の傾向を示しており、2割強が「活用されていると思う」、4割強が「どちらかといえば活用されていると思う」、3割程度が「どちらかといえば活用されていないと思う」、1割弱が「活用されていないと思う」という回答だった。

5. 「あなたの事業所ではこの半年間でICT(情報通信技術)の活用が進んだと思いますか?」という設問に対する第2回調査の回答は、第1回調査と比較して否定的な意見の割合が多く、「進んだと思う」「進んでいないと思う」がともに2割弱、「どちらかといえば進んだと思う」「どちらかといえば進んでいないと思う」がともに3割強だった。

 

6. 「あなたの事業所において、これまでICT(情報通信技術)活用が進んだことによってもたらされたと感じている効果を選択してください。」という設問に対する第2回調査の回答は、第1回調査と比較して、全体的に下降傾向にあり、特に最も票を集めている「残業時間の減少」の選択率が著しく低下していた(第1回調査:39.3%、第2回調査:30.5%)。

 

7. 「あなたの事業所において、これからICT(情報通信技術)活用が進むことによってもたらされるだろうと感じている効果を選択してください。」という設問に対する第2回調査の回答は、特に最も票を集めている「残業時間の減少」の選択率が第1回調査と比較して著しく低下していた(第1回調査:50.2%、第2回調査:40.7%)ことを除いて、ほぼ第1回調査と同水準だった。

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

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