
第2回ICT活用による業務効率化に関する調査
高齢社会ラボでは、2021年度介護報酬改定において「テクノロジーの活用による介護サービスの質の向上及び業務効率化」を推進していくことが確認されたことを受け、半年に一度ICTの活用がどのように進んでいるのかを調査すること
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現在策定が進められている第8期介護保険事業基本指針において、「元気高齢者の参入による業務改善」に新しく言及することが検討されている。これを受けて、高齢社会ラボでは、「元気高齢者の参入」の現状とそれに対する期待について、特に65歳以上の介護助手に焦点を当てて調査を実施した。
調査の結果、いまだほとんどの介護事業所において65歳以上の介護助手は参入しておらず、せいぜい10%程度であることがわかった。また、65歳以上の介護助手に対する期待の高さは、既に65歳以上の介護助手がいるか否かによって、大きく異なっていた。
調査名:元気高齢者の介護参入に関する調査
調査対象:カイポケリサーチ
対象サービス種別:訪問介護、通所介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、夜間対応型訪問介護、認知症対応方通所介護
調査期間:2021年8月11日~9月15日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:210件
1. 「65歳以上の介護助手はいますか」という設問に対し、「わからない」という回答を除くと、「はい」という回答が9.2%、「いいえ」という回答が90.8%だった。なお、以下の記述では、この設問に対して「はい」と回答した者を「65歳以上の介護助手あり」群(n=19)、「いいえ」と回答した者を「65歳以上の介護助手なし」群(n=187)と示す。
2. 1.の回答をサービス種別ごとに見ると、サービス種別に訪問介護が含まれる事業所では、「はい」という回答が8.2%、「いいえ」という回答が91.8%だった。
3. 同様に、サービス種別に通所介護が含まれる事業所では、「はい」という回答が12.6%、「いいえ」という回答が87.4%だった。
4. 「65歳以上の介護助手の数が増えてほしい・増やしたいと思いますか」という設問に対しては、「全くそう思わない」(1位、28.5%)、「そう思わない」(2位、20.5%)というネガティブな回答が大きな割合を占める一方で、割合としては少ないものの「非常にそう思う」という回答も11.0%存在した。
5. 4.の回答は「65歳以上の介護助手あり」群と「65歳以上の介護助手なし」群とで大きく異なることがわかった。「65歳以上の介護助手あり」群においては、ポジティブな回答(「非常にそう思う」「そう思う」「どちらかといえばそう思う」)が全体の半分以上を占めた(57.9%)。他方で、「65歳以上の介護助手なし」群においては、ネガティブな回答(「どちらかといえばそう思わない」「そう思わない」「全くそう思わない」)が全体の半分以上を占めた(69.5%)。
6. 介護助手のおこなう周辺業務は、その難易度によってAクラス、Bクラス、Cクラスに分かれる(ただし、下記の具体例は利用者や施設の状況によってクラスが変わることがある)。
これを踏まえ、「65歳以上の介護助手にお願いしたい周辺業務のクラスはどれですか」と尋ねた。この設問への回答も5.と同様に、「65歳以上の介護助手あり」群と「65歳以上の介護助手なし」群と大きく異なることがわかった。「65歳以上の介護助手あり」群では、「お願いしたい周辺業務は特にない」という回答が最も少なく(15.8%)、Cクラスの回答が最も多かった(42.1%)。
研究員
東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。