2021/11/10

医療・介護連携に関する調査

結果の概要

高齢社会ラボでは、地域包括ケアシステムにおいて医療・介護連携が重要なものと位置づけられていることを受けて、医療・介護連携がどのように進んでいるのかを調査した。
ほぼ全ての回答者が医療・介護連携を必要なものと位置づけている一方で、これが十分に実現できているという回答は1割程度に留まっていた。
3割近い回答者がこの半年間で連携が進んだと回答し、4割を超える回答者が今後の半年間で連携が進むだろうと回答していることから、医療・介護連携は現在においても着実に進んでいるものと推察できる。ただし、7割近い回答者がこの半年間で連携状況が変わっていないと回答し、6割近い回答者が今後の半年間でも連携は変わらないだろうと回答していることから、医療・介護連携の進展は局所的であるとも評価できる。
医療・介護連携に必要なこととして、介護職の回答者も医療職の回答者もその多くが「医療関係者と介護関係者がコミュニケーションをとる機会を増やす」ことを挙げており、このようなコミュニケーションの場の構築が課題になっていることが浮き彫りになった。

 

調査概要

  • 調査名:医療・介護連携に関する調査(2021年9月実施)
  • 調査対象:カイポケリサーチ
  • 対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護
  • 調査期間:2021年9月15日~10月10日
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:364件(経営者:267件、73.3%)

 

調査詳細

1. 「あなたは医療・介護連携を進める必要があると思いますか?」という設問に対して、「必要だとおもう」「どちらかといえば必要だと思う」という回答(以下のグラフでは「はい」としてまとめている)が97.2%であり、「どちらかといえば不要だと思う」「不要だと思う」という回答(以下のグラフでは「いいえ」としてまとめている)が2.8%だった。ただし、「わからない」という回答を除いている(回答数4)。

 

 

2. 「あなたの事業所において、医療・介護連携は十分に実現できていると思いますか?」という設問に対する回答のうち最も多かったものは「ある程度は実現できている」だった(61.6%)。「十分に実現できている」という回答は11.4%に留まっていた。

 

 

3. 「あなたの事業所における医療・介護連携は、これまでの半年間でどのように変化しましたか?」という設問に対して、「進展した」という回答が28.9%、「変わらない」という回答が69.0%、「後退した」という回答が2.1%だった。ただし、「わからない」という回答を除いている(回答数25)。

 

 

4. 「あなたの事業所における医療・介護連携は、これからの半年間でどのように変化すると思いますか?」という設問に対して、「進展する」という回答が42.9%、「変わらない」という回答が55.8%、「後退した」という回答が1.3%だった。ただし、「わからない」という回答を除いている(回答数45)。

 

 

5. 「医療・介護連携を進めるためには何が必要だと思いますか?」という設問に対し、予め設定した選択肢(複数回答可・選択数の上下限なし)のなかで最も票を集めたものは「医療関係者と介護関係者がコミュニケーションをとる機会を増やす」だった(1位、66.8%)。それに、「介護事業所から医療機関に問い合わせをしやすい環境をつくる」(2位、51.9%)と「医療関係者が介護の現状を理解する」(3位、49.7%)が続いた。

 

 

「あなたはご自身を介護職・医療職のどちらだと思っていますか?」と尋ね、「介護職」「医療職」「どちらでもある」「どちらでもない」「わからない」の選択肢のうちいずれか1つを選択してもらった。その結果として、「介護職」「どちらでもある」と回答した者を「介護職群」(n=290)、「医療職」「どちらでもある」と回答した者を「医療職群」(n=69)とした。ただし、「どちらでもある」という回答者が介護職群と医療職群で重複していることに注意されたい。

 

6. 5.の設問に対する回答を介護職群に限定したところ、5.と同じく、最も票を集めたものは「医療関係者と介護関係者がコミュニケーションをとる機会を増やす」(1位、65.9%)であり、それに「介護事業所から医療機関に問い合わせをしやすい環境をつくる」(2位、55.2%)と「医療関係者が介護の現状を理解する」(3位、52.1%)が続いた。

 

 

7. 5.の設問に対する回答を医療職群に限定したところ、5.と同じく、最も票を集めたものは「医療関係者と介護関係者がコミュニケーションをとる機会を増やす」(1位、75.4%)であり、それに「介護事業所から医療機関に問い合わせをしやすい環境をつくる」(2位、50.7%)と「医療関係者が介護の現状を理解する」(3位、44.9%)が続いた。

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

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