
介護事業経営実態調査結果の5年間推移
令和2年度介護事業経営実態調査の結果(案)においては令和元年度決算の数値による介護事業所の収支差率の結果であるため、新型コロナウイルスの発生による経営状況の悪化の状況がまだ反映されていない。
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介護経営の課題を把握することを目的として、介護経営を行っている経営者の経営に対する考え方を調査しました。
月商200万以上の法人およびその経営者は、月商200万未満の法人およびその経営者と比較して、以下のような傾向が見られました。
ただし、これをもって「上記のような傾向があるから月商が多い」や「月商が多いから上記の傾向がある」といった因果関係の説明はできないこと、上記のような傾向が常に優れているあるいは望ましいとは言えないことについては留意する必要があります。
1. 「あなたの経営する法人の月商はどの程度ですか?」という設問に対して、「100万円未満」という回答が最も多く約3割を占め、200万円未満までで半数を超える結果となった。
以後、1.の結果に基づき、回答者を「月商200万円未満」(n=138)と「月商200万円以上」(n=99)の2つの群に分ける。
2. 「あなたの法人の意思決定は、トップダウンとボトムアップのどちらの性質が強いですか?」という設問に対して、「ボトムアップの性格が強い」という回答は「月商200万円未満」「月商200万円以上」のどちらの回答者群でもともに約1割であり、「トップダウンの性格が強い」という回答は「月商200万円未満」の回答者群で約1/4、「月商200万円以上」の回答者群で約4割だった。
以下3.~5.の設問においては、提示したいくつかの選択肢から自身の考え方に最も近いものを選択してもらった。
3. 「経営者も現場に入るべきだ」「経営者は経営に専念すべきだ」という選択肢を提示したところ、「月商200万円未満」の回答者群は半分弱が前者を、約1割が後者を選択し、「月商200万円以上」の回答者群は4割弱が前者を、2割強が後者を選択した。
4. 「経営者は周囲の意見を聞いて意思決定をおこなうことが大切だ」「経営者は自身の強いリーダーシップで意思決定を先導することが大切だ」という選択肢を提示したところ、前者を選択した回答者は「月商200万円未満」「月商200万円以上」のどちらの回答者群でも半分弱であり、後者を選択した回答者は「月商200万円未満」の回答者群では2割弱、「月商200万円以上」の回答者群では3割弱だった。
5. 「事業成長は必要ない」「事業成長は必要だが、そのために投資や融資を積極的に活用する必要はない」「事業成長は必要であり、そのために投資や融資を積極的に活用すべきだ」という選択肢を提示したところ、「事業成長は必要であり、そのために投資や融資を積極的に活用すべきだ」を選択した回答者は、「月商200万円未満」の回答者群では約4割、「月商200万円以上」の回答者群では約6割だった。
6. 経営者の行動に関して以下のグラフにある各項目を提示したうえで、回答者の行動に当てはまるものを複数選択で選択してもらったところ、全ての項目で「月商200万円以上」の回答者群の選択率が「月商200万円未満」の回答者群の選択率を上回った。最も差の大きかった項目は、「常日頃から経営課題を解決するための行動を起こす習慣をもっている」だった(「月商200万円以上」の回答者群で40.4%、「月商200万円未満」の回答者群で23.9%)。対して、最も差の小さかった項目は、「月1回以上の頻度で、法人の財務状況を確認している」だった(「月商200万円以上」の回答者群で59.6%、「月商200万円未満」の回答者群で53.6%)。
7. 法人の状態に関して以下のグラフにある各項目を提示したうえで、回答者の行動に当てはまるものを複数選択で選択してもらったところ、全ての項目で「月商200万円以上」の回答者群の選択率が「月商200万円未満」の回答者群の選択率を上回った。最も差の大きかった項目は、「理念が明確に定まっている」だった(「月商200万円以上」の回答者群で41.4%、「月商200万円未満」の回答者群で23.9%)。対して、最も差の小さかった項目は、「事業運営に必要な機能が充足されている」だった(「月商200万円以上」の回答者群で12.1%、「月商200万円未満」の回答者群で10.9%)。
高齢社会ラボの編集担当者
介護・障害福祉事業者向けシステム開発担当者や介護・障害福祉業界に長く携わるメンバーが在籍。 データの分析、アンケート調査、研究活動を通して、介護・障害福祉経営や運営に役立つ情報を発信しています。