2022/2/10

経営の考え方に関する調査

結果の概要

介護経営の課題を把握することを目的として、介護経営を行っている経営者の経営に対する考え方を調査しました。
月商200万以上の法人およびその経営者は、月商200万未満の法人およびその経営者と比較して、以下のような傾向が見られました。

  • トップダウンの性格が強い(ただし、月商200万未満の法人経営者においてボトムアップの性格が強いとは言えない)
  • 「経営者は現場に入るよりも経営に専念すべきだ」と考えている
  • 「投資や融資を積極的に活用すべきだ」と考えている
  • 常日頃から経営課題を解決するための行動を起こす習慣をもっている
  • 法人の理念が明確に定まっている

ただし、これをもって「上記のような傾向があるから月商が多い」や「月商が多いから上記の傾向がある」といった因果関係の説明はできないこと、上記のような傾向が常に優れているあるいは望ましいとは言えないことについては留意する必要があります。

 

調査概要

  • 調査名:経営の考え方に関する調査(2021年12月実施)
  • 調査対象:カイポケリサーチ
  • 対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、通所介護、福祉用具貸与、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、居宅療養管理指導、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護
  • 対象者:経営者
  • 調査期間:2021年12月15日~2022年1月10日
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:237

 

調査詳細

1. 「あなたの経営する法人の月商はどの程度ですか?」という設問に対して、「100万円未満」という回答が最も多く約3割を占め、200万円未満までで半数を超える結果となった。

 

以後、1.の結果に基づき、回答者を「月商200万円未満」(n=138)と「月商200万円以上」(n=99)の2つの群に分ける。

 

2. 「あなたの法人の意思決定は、トップダウンとボトムアップのどちらの性質が強いですか?」という設問に対して、「ボトムアップの性格が強い」という回答は「月商200万円未満」「月商200万円以上」のどちらの回答者群でもともに約1割であり、「トップダウンの性格が強い」という回答は「月商200万円未満」の回答者群で約1/4、「月商200万円以上」の回答者群で約4割だった。

以下3.~5.の設問においては、提示したいくつかの選択肢から自身の考え方に最も近いものを選択してもらった。

 

3. 「経営者も現場に入るべきだ」「経営者は経営に専念すべきだ」という選択肢を提示したところ、「月商200万円未満」の回答者群は半分弱が前者を、約1割が後者を選択し、「月商200万円以上」の回答者群は4割弱が前者を、2割強が後者を選択した。

 

4. 「経営者は周囲の意見を聞いて意思決定をおこなうことが大切だ」「経営者は自身の強いリーダーシップで意思決定を先導することが大切だ」という選択肢を提示したところ、前者を選択した回答者は「月商200万円未満」「月商200万円以上」のどちらの回答者群でも半分弱であり、後者を選択した回答者は「月商200万円未満」の回答者群では2割弱、「月商200万円以上」の回答者群では3割弱だった。

 

5. 「事業成長は必要ない」「事業成長は必要だが、そのために投資や融資を積極的に活用する必要はない」「事業成長は必要であり、そのために投資や融資を積極的に活用すべきだ」という選択肢を提示したところ、「事業成長は必要であり、そのために投資や融資を積極的に活用すべきだ」を選択した回答者は、「月商200万円未満」の回答者群では約4割、「月商200万円以上」の回答者群では約6割だった。

 

6. 経営者の行動に関して以下のグラフにある各項目を提示したうえで、回答者の行動に当てはまるものを複数選択で選択してもらったところ、全ての項目で「月商200万円以上」の回答者群の選択率が「月商200万円未満」の回答者群の選択率を上回った。最も差の大きかった項目は、「常日頃から経営課題を解決するための行動を起こす習慣をもっている」だった(「月商200万円以上」の回答者群で40.4%、「月商200万円未満」の回答者群で23.9%)。対して、最も差の小さかった項目は、「月1回以上の頻度で、法人の財務状況を確認している」だった(「月商200万円以上」の回答者群で59.6%、「月商200万円未満」の回答者群で53.6%)。

 

7. 法人の状態に関して以下のグラフにある各項目を提示したうえで、回答者の行動に当てはまるものを複数選択で選択してもらったところ、全ての項目で「月商200万円以上」の回答者群の選択率が「月商200万円未満」の回答者群の選択率を上回った。最も差の大きかった項目は、「理念が明確に定まっている」だった(「月商200万円以上」の回答者群で41.4%、「月商200万円未満」の回答者群で23.9%)。対して、最も差の小さかった項目は、「事業運営に必要な機能が充足されている」だった(「月商200万円以上」の回答者群で12.1%、「月商200万円未満」の回答者群で10.9%)。

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

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