2023/3/10

第4回ICT活用による業務効率化に関する調査

結果の概要

高齢社会ラボでは、2021年度介護報酬改定において「テクノロジーの活用による介護サービスの質の向上及び業務効率化」を推進していくことが確認されたことを受け、半年に一度ICTの活用がどのように進んでいるのかを調査することといたしました。今回は第4回となります。

業務上利用されているICTの構成については、各回を通じて大きく変わらない結果となりました。他方で、「ICTが活用されている」という回答は増加傾向にあり、徐々にICT活用が進んでいると見受けられます。

 

調査概要

  • 調査名:ICT活用による業務効率化に関する調査
    • 第1回調査:2021年7月実施(調査期間:2021年7月15日~8月10日)
    • 第2回調査:2022年1月実施(調査期間:2022年1月15日~2月10日)
    • 第3回調査:2022年7月実施(調査期間:2022年7月15日~8月10日)
    • 第4回調査:2023年1月実施(調査期間:2023年1月25日~2月20日)
  • 調査方法:カイポケリサーチ(カイポケ会員を対象とするインターネット調査)
  • 対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション
  • 有効回答数
    • 第1回調査:267件
    • 第2回調査:334件
    • 第3回調査:324件
    • 第4回調査:266件

 

調査詳細

1. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、現在業務上で利用しているものを選択してください」という設問に対する回答は、各回を通じて同様の傾向が見られ、上位群・中位群・下位群に分かれている。

  • 上位群にはスマートフォン・FAX・ノートパソコン・タブレット・電子メールが属する。
  • 中位群にはデスクトップパソコン・オンライン会議ツール・職員間のコミュニケーションツールが属する。
  • 下位群には利用者またはその家族とのコミュニケーションツール・クラウドストレージ・クラウド会計ソフト・スケジュール共有ソフト・ガラケー・電子署名ツールが属する。

このなかでも特に、「利用者またはその家族とのコミュニケーションツール」「クラウド会計ソフト」は増加傾向を示しており、今度の動向を注視したい。

2. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、この半年の間に業務上の利用を始めたものを選択してください」という設問に対する回答では、「スマートフォン」「タブレット」「ノートパソコン」「FAX」「クラウド会計ソフト」が上昇傾向を示していた。他方で、「オンライン会議ツール」は下降傾向を示している。

なお、第1回調査には「該当するものはない」という項目がなく、有意義に比較することができないため、第2回以降の調査結果を示している。

3. 「以下のICT(情報通信技術)のうち、今後利用したいと考えているものを選択してください」という設問に対する回答では、「スケジュール共有ツール」が大きくポイントを伸ばしていた(第3回調査:10.8%→第4回調査:16.5%)。また、「電子署名ツール」への期待は大きいものの、1.および2.の結果から、導入がなかなか進まない現状を見て取ることができる。

なお、第1回調査には「該当するものはない」という項目がなく、有意義に比較することができないため、第2回以降の調査結果を示している。

4. 「あなたの事業所でICT(情報通信技術)が十分に活用されていると思いますか?」という設問に対する回答では、「活用されていると思う」「どちらかといえば活用されている」という回答の合計の割合が上昇傾向にあり、ICT活用が徐々に進んでいることがわかる。

 

5. 「あなたの事業所ではこの半年間でICT(情報通信技術)の活用が進んだと思いますか?」という設問に対する回答は、第2回~第4回を通じて同様の傾向を示しており、20%弱が「進んだと思う」、35%程度が「どちらかといえば進んだと思う」、30%前後が「どちらかといえば進んでないと思う」、20%前後が「進んでいないと思う」となっている。

 

6. 「あなたの事業所において、これまでICT(情報通信技術)活用が進んだことによってもたらされたと感じている効果を選択してください。」という設問に対する回答は、各回を通じて順位に大きな変動がなく、上位3項目は「残業時間の減少」「移動にかかる時間の減少」「精神的なストレスの減少」だった。

7. 「あなたの事業所において、これからICT(情報通信技術)活用が進むことによってもたらされるだろうと感じている効果を選択してください。」という設問に対する回答では、各回を通じて、「残業時間の減少」が突出して多かった。

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

関連記事

注目タグ