2022/1/10

第2回介護現場の革新(生産性向上)に関する調査

結果の概要

高齢社会ラボでは、2021年度介護報酬改定において「介護現場の革新」が喫緊・重要な課題として掲げられたことを受け、半年に一度、介護現場の革新がどのように進んでいるのかを調査することといたしました。2021年5月に実施した第1回調査に続き、今回は第2回となります。
前回調査と比較して、経営者の賃金水準に対する満足度は低下している傾向が見られました。また、実際、調査時点以前半年間における賃金水準の変化を尋ねたところ、増加を示す回答の割合が減少していました。他方、経営者以外の者においては、賃金に対する満足度も賃金もこの半年間でほとんど変化していないという傾向が見られました。

調査概要

調査名:第2回介護現場の革新(生産性向上)に関する調査(2021年11月実施)
調査対象:カイポケリサーチ
対象サービス種別:居宅介護支援、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション
調査期間:2021年11月15日~12月10日
調査方法:インターネット調査
有効回答数:351件

調査詳細

【サンプルの偏りについて】

1. 「あなたの現在の役職・役割はなんですか?」(「経営者」「経営者以外」のいずれか1つを選択)という設問において、「経営者」と回答した者を「現経営者群」、「経営者以外」と回答した者を「現経営者以外群」と分けた。なお、回答者群の名称を前回調査より改めているが、定義に変化はない。
前回調査(2021年5月実施第1回調査)と今回調査(2021年11月実施第2回調査)において、現経営者群と現経営者以外群の割合の変化はほとんど見られなかった。

【基礎調査】

2. 前回調査と同様に、調査時点より前の半年間における仕事上の変化によって現経営者群を分けたところ、前回調査と比較して、「変化なし」の割合が5.5%増加し、逆に「役職のみ変化」の割合が5.8%減少していた。

3. 同様に現経営者以外群を分けたところ、前回調査と比較して、「変化なし」の割合が7.8%増加し、逆に「役職のみ変化」の割合が9.8%減少していた。

【賃金水準/賃金の満足度に関する調査】

4. 現経営者群に対して「現在、あなたはあなたの経営する事業所の賃金水準に満足していますか?」尋ねたところ、前回調査と比較して、ポジティブな回答が1割程度減少した。(ここで、「ポジティブな回答」とは、「非常に満足している」「満足している」「どちらかといえば満足している」の回答を意味する。)

5. 現経営者以外群に対して「現在、あなたは自身の賃金に満足していますか?」尋ねたところ、前回調査と比較して、ポジティブな回答とネガティブな回答の割合はほとんど変化していなかった。(ここで、「ポジティブな回答」とは「非常に満足している」「満足している」「どちらかといえば満足している」の回答を、「ネガティブな回答」とは「どちらかといえば満足していない」「満足していない」「非常に満足していない」の回答を意味する。)
内訳を見ると、ポジティブな回答においては「非常に満足している」「満足している」の割合が減って「どちらかといえば満足している」の割合が増え、ネガティブな回答においては「どちらかといえば満足していない」「非常に満足していない」の割合が減って「満足していない」の割合が増えていた。

【現経営者群を対象とした賃金水準の変化とその要因に関する調査】

6. 現経営者群のうち仕事上の変化に関する2.の分類において「変化なし」または「役職のみ変化」に属する者に対して「半年前と比較して、あなたの経営する事業所の賃金水準はどのように変化しましたか?」と尋ねたところ、前回調査と比べて、「大きく上昇した」「上昇した」が合わせて7.7%減少し、「変わらない」が6.4%増加した。「下降した」「大きく下降した」はほとんど変化がなかった。

7. 6.の設問において「大きく上昇した」「上昇した」と回答した者に対して、「賃金水準の変化の要因はなんですか?(複数回答可)」と尋ねたところ、前回調査も今回調査も、「利用者の数が変化した」という回答が7割近くを占めた。また、前回調査と比較して、「職員の数が変化した」という回答が15.9%増加していた。

 

8. 6.の設問において「下降した」「大きく下降した」と回答した者に対して、「賃金水準の変化の要因はなんですか?(複数回答可)」と尋ねたところ、前回調査も今回調査も、「利用者の数が変化した」という回答が7割近くを占めた。

【現経営者以外群を対象とした賃金の変化とその要因に関する調査】

9. 現経営者以外群に対して「半年前と比較して、あなたの賃金はどのように変化しましたか?」と尋ねたところ、前回調査と比べて、「大きく上昇した」「上昇した」が合わせて2.6%減少し、「変わらない」が4.4%増加し、「下降した」「大きく下降した」が合わせて1.7%減少していた。

10. 9.の設問において「非常に増えた」「増えた」と回答した者に対して、「賃金の変化の要因はなんですか?(複数回答可)」と尋ねたところ、前回調査と比べて、「基本給が変わった」「業務内容が変わった」の割合が大きく減少し、逆に「業務量が変わった」「資格が変わった」の割合が大きく増加した。

 

11. 9.の設問において「減った」「非常に減った」と回答した者に対して、「賃金の変化の要因はなんですか?(複数回答可)」と尋ねたところ、前回調査と比べて、「転職した」「就職した」の割合が大きく減っていた。

研究員

安齋 耀太

研究員

安齋 耀太

東京大学大学院博士課程 単位取得後満期退学。日本学術振興会 特別研究員(DC1)、Martin-Luther-Universität Halle-Wittenberg 客員研究員、神奈川工科大学および神奈川社会福祉専門学校 非常勤講師を歴任。2021年、(株)エス・エム・エスに入社。介護事業者向け事業の経営企画に携わりながら、高齢社会に関する統計調査の設計・実行・分析・発信に従事。社会調査士。

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